7/17開催 イベントレポート
国産マルチモーダル基盤モデル開発に向けて「FRONTia」事業の初ワークショップを開催!
2026年7月17日、前日に実施した「我が国のフィジカルAI政策に関する対外発信イベント」の一環として、初となるワークショップイベントを開催しました。
FRONTia事業は、Noetra株式会社が担う「開発枠」と、国立研究開発法人産業技術総合研究所 ( 産総研 ) が中心となる「探求枠」の2本柱で推進され、AIロボット・フィジカルAIの開発基盤となる国産マルチモーダル基盤モデルの開発を通じて、製造業をはじめとする産業競争力の強化やGXへの貢献を目指しています。会場では各領域ディレクターによるプレゼンテーションに加え、ポスターセッションも実施され、200人以上の参加者による活発な意見交換が行われました。
【オープニング】 世界に向けて新しい扉を開く先駆者たちが日本独自のデータを使ってモデル開発に挑む
経済産業省大臣官房審議官 ( 商務情報政策局担当 ) の奥家敏和は、前日に開催された「我が国のフィジカルAI政策に関する対外発信イベント」を振り返りながら、日本のフィジカルAIに対する国内外の関心の高まりについて説明しました。
また、FRONTiaでは開発枠と探求枠を並行して推進することで、新たなアルゴリズムやAIエージェントの創出を目指すとともに、日本でしか取得・活用できない現場データを強みとして活用していく考えを示しました。GENIACとの連携を通じて、摩擦や触覚などフィジカル領域に関する独自のデータセット構築を進め、新たな技術やモデル開発につなげていく方針を紹介しました。
奥家審議官は最後に「皆さんは、日本だけでなく世界に向けて新しい扉を開く先駆者 ( パイオニア ) です。」と呼びかけ、「皆さんが作るモデルは、私たちの未来の基盤になるでしょう。今後の活動に大きく期待しています。ベストを尽くしてください。」と締め括りました。
【事業全体の開発概要説明】 「現実世界を理解し、現場で動作できるAI」を目指して
続いて、Noetra株式会社 開発戦略室 室付 岡野原大輔氏がFRONTia事業全体の開発概要・開発ロードマップ、乗り越えるべき課題を説明しました。
岡野原氏は、プロジェクトの目的について「現実世界を理解し、実際に行動できるAIを作ること」だと説明しました。また、Noetraが担う開発枠と、産総研を中心とする探求枠が連携しながら事業を推進し、探求枠で創出された研究成果を開発枠へ取り込むことで、モデルをさらに進化させる方針を紹介しました。さらに、「推論基盤モデル」と「生成基盤モデル」の開発を進めるとともに、スケーリングやマルチモーダル統合、世界モデルの構築などの課題に取り組みながら、環境や課題に適応して行動できるAIの実現を目指す考えを示しました。
そして、「この考え方を心に留めて、このプロジェクトを進めていってください。今日は、私たちが互いに話し、理解し合う最初の機会です。コミュニケーションし、理解を深め、一緒に素晴らしい成果を生み出しましょう。」と参加者たちに呼びかけました。
【開発枠概要説明】
Noetra株式会社 開発戦略室 室付 井尻善久氏は、開発枠の体制やロードマップについて説明しました。
開発枠では、世界的に競争力のある国産マルチモーダル基盤モデルの開発を目指し、音声・視覚・言語を統合したモデル開発や、エージェント機能、物理推論、高度な知識、安全性機能の高度化を進めます。同時に、画像生成や関連分野の研究も開始しながら、最終的には物理世界を理解・生成できる「世界モデル」の実現を目指します。
井尻氏はチーム体制についても紹介しました。2026年度には、開発枠に約100名のエンジニアと研究者を集める予定です。2026年度の重点は開発体制の構築なので、まずは訓練や育成のためのメンバーを多く採用し、さらにLLMモデル開発、オムニモーダル基盤モデル開発、世界モデル開発、戦略的研究開発の各部門に人材を配置する予定です。
【探求枠概要説明】
探求枠事務局を務める産業技術総合研究所 人工知能研究センター 副研究センター長の濱崎雅弘氏は、探求枠の全体像について説明しました。
探求枠は、「原理解明・効率化」「視覚・3D」「音声・音響」「ロボット・デジタルツイン」「エージェント」の5つの研究領域で構成されています。「国内外の研究機関や研究者との連携を進めながら、研究成果を日本の産業側に還元し、基盤モデルの開発に活かしていきます。」と述べました。
【探求枠各領域の紹介: 「原理解明・効率化」領域】 メカニズムを理解し、継続学習の実現を目指す
岡野原ディレクターは、「メカニズムの理解」「ドメイン非依存の安定した大規模知識獲得と転移」「継続学習」の3つを中核テーマとして紹介しました。AIの内部構造やメカニズムの理解を深めるとともに、限られたデータから効率的に知識を獲得・転移し、環境変化に適応するために長期間にわたり学習し続けられるAIの実現を目指します。
岡野原氏は最後に「長期的にはフィジカルAIにおいては特に、さらに高度な推論トレーニングが必要になると考えています。そのため、私たちはこれらの目標達成に向けて、今後も全力で取り組んでいきます。」と紹介を締め括りました。
【探求枠各領域の紹介: 「視覚・3D」領域】 高度なシーン理解と推論を目指す
井尻ディレクターは、「言語概念と画像・映像の統合」をテーマに、言語から物理的に一貫した画像・映像を生成できる技術の開発が目標であると掲げました。高度なシーン理解と推論能力の実現に向けて、「汎用ビジュアルファウンデーションモデル」「人と物体のインタラクションモデル」「エンボディドAIエージェント」の研究を推進し、視覚・3D技術の高度化を目指します。
【探求枠各領域の紹介: 「音声・音響」領域】 研究成果だけではなく、次世代リーダー輩出も目指す
カーネギーメロン大学 言語技術研究所 准教授の渡部晋治ディレクターは、「公平でインテリジェントな音響・マルチモーダルAI」の実現を掲げました。音声、環境音、音楽、生体信号など多様なモダリティを対象とした研究を進めるとともに、国内外の研究者との連携や研究エコシステムの構築を通じて、研究成果を基盤モデル開発へ還元していく考えを示しました。
【探求枠各領域の紹介: 「ロボット・デジタルツイン」領域】 「真のフィジカルAI」で現実世界にて役に立てるか
産業技術総合研究所 人工知能研究センター 実体知能研究チーム長の堂前幸康ディレクターは、「人・ロボット共同作業のための協働VLA ( Vision-Language-Action ) モデル」の構築について説明しました。
また、「人間理解と協働」「クロス・エンボディメント学習」「変化する実世界への適応」の3つの研究テーマを紹介し、人とロボットが言語・視覚・行動を共有しながら協働できる「協働VLA」の実現を目指す方針を示しました。
【探求枠各研究領域の紹介: 「エージェント」領域】 大規模マルチエージェント、言葉にされないニーズも読み取る
カーネギーメロン大学 コンピュータサイエンス学部言語技術研究所 ( CMU-LTI ) 准教授のグラム・ニュービッグディレクターは、ビデオメッセージを通じてエージェント領域の方向性を紹介しました。
本領域では、「仮想世界と現実世界のモデリング」「一人称文脈の理解」「大規模マルチエージェントシステムにおける協調」「言葉にならないニーズの理解」の4つの研究テーマを推進します。評価基盤や強化学習、シミュレーション環境を共有しながら研究成果を発展させ、実世界と仮想空間の双方で行動するマルチモーダルAIエージェントの実現を目指します。
【今後の事業運営方針説明】 変化の激しい時代に柔軟に、透明性高くモデル開発を行う
経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 AI産業戦略室長の渡辺琢也が、今後の事業運営方針について説明しました。渡辺室長は、GENIACやAIRoA ( AIロボット協会 ) の成果や知見を発展させる形でFRONTiaが立ち上げられた経緯を紹介するとともに、国内企業のニーズに応える基盤モデル開発、先端的研究成果の創出、人材基盤の構築を事業目標として掲げました。また、急速に変化する国際的な技術動向に対応するため、開発枠と探求枠が密に連携しながら柔軟な運営を行う方針を説明しました。成果の社会還元や透明性の確保を重視するとともに、参加者が研究開発に集中できるような環境を整備し、経済産業省としても研究開発の推進を支援していく考えを示しました。
【マッチングイベント】 国内外の研究者が集結、4時間にわたる活発な意見交換
午後のポスターセッションには、FRONTia開発枠・探求枠に加えて、AI-Ready事業やデータシステム第4期に採択されたGENIAC企業22社が参加しました。各チームによる研究開発内容や、それを支えるデータ構築について紹介が行われ、海外研究者も交えて4時間にわたり活発な意見交換が繰り広げられました。
【クロージング】 未来を創るために、失敗を恐れず挑戦する
クロージングでは、産業技術総合研究所 人工知能研究センター 研究センター長の片桐恭弘氏が登壇し、「未来を予測する最善の方法は、それを発明すること」という言葉を引用しながら、失敗を恐れず挑戦を続けることの大切さを参加者へ呼びかけ、イベントを締めくくりました。
FRONTiaは、AIロボット・フィジカルAIの開発基盤となる国産マルチモーダル基盤モデルの開発を推進する事業です。GENIACで培われた基盤モデル開発の知見や構築されたデータ、コミュニティを発展させながら、日本発のフィジカルAI基盤の構築を目指しています。